絨毯スピーカー

絨毯スピーカー

【絨毯スピーカー作製の経緯】

絨毯スピーカーというのは、絨毯を巻いてスピーカーユニットを載せるだけという極めて簡単な構造のスピーカーシステムです。
エンクロージャーを吸音材で作ることで、スピーカー背圧の逆位相音を吸音しスピーカーユニット本来のピュアな音を妨げないこと、箱なりや共振がないのでクリアな音になることが特徴のようです。
構成が簡単なため、自作してみました。

【材料・機材】

・スピーカー MarkAudio CHR-70v3(後にALPAIR7v3に変更)
・アンプ S.M.S.L SA-36A
・絨毯 ニトリ80cm x 150cm 571円。

【デザイン・制作】

ネットで検索すると絨毯スピーカーの情報は色々と出てきます。絨毯を丸めてスピーカーを載せるだけなら30分で完成します。しかし、やはり絨毯を丸めただけでは、デザイン的にいただけません。そこで・・・
まずはPUレザーと一緒に巻き込みました。端部も裏側にも巻き込みます。

絨毯スピーカーのレザー

 

留具はマグネットボタンで心地よくパチパチと固定できます。

絨毯スピーカーの台

次は台を制作。
自在錐で加工し、ボイド管を接着します。

絨毯スピーカーの塗装

塗装は弊社定番・墨汁+ウレタンマットクリア。
低音を放出するために、底はゴム脚をつけ、15mm程度浮かします。

絨毯スピーカーのバッフル

バッフル板も同様に制作。
最後にスピーカーに錘をつけます。

絨毯スピーカーの錘

錘は鉛のインゴットを購入し、鍋で溶かします。アルミ缶の中にあらかじめ長ねじをセットして溶けた鉛を注ぎます。

絨毯スピーカーの台

冷えたらアルミ缶の縁を切取りハンマーで叩いて整えて完成です。

絨毯スピーカーの錘の取り付け

スピーカーにナットをエポキシ系の接着剤で固定します。
これでいつでも錘を外したり取り替えたりすることが可能です。

【音に関する感想】

まずは絨毯をくるくる丸めスピーカーを載せて再生。こんな簡単な作りで体験したことのない解像感がある立体的な音が広がり驚きました。超解像度と評判のクリプトンのHQMと比べるとHQMが籠って聞こえます。一度絨毯スピーカーの解像感を体験すると、戻れなくなりました。
ボーカルやヴァイオリンの音は最高に綺麗です。一方、低音が少し物足りません。

【ソフトエンクロージャーに関する分析】

ネット上では一部に絨毯スピーカーはスピーカーそのままの音であるとの意見もありますが、それほど単純ではありません。
そもそもスピーカーの音をピュアに聞かせることは、実現するのが非常に困難な一つの理想です。
通常はエンクロージャー内の残響、エンクロージャーの共振、および数々の共鳴により、余計な音が必ず乗ります。しかし、ソフトエンクロージャーは簡単な作りでこれらをほとんどなくすことができるのです。
よく、残響の強いスピーカーが楽器のようなスピーカーと称して売られています。
しかし、それは、言い訳で、必ず音が濁ります。

「平面バッフル・後面開放型との比較」

理想的な平面バッフルは、無限に続く平面で正音と裏音を完全に分離し、スピーカーそのものの音を再現することです。
しかし、現実は広いバッフル面が共振し、物理的な大きさは限られるので裏音が正音と混じります。
絨毯スピーカーは、裏音を完全に吸収するわけでなく、円筒形の形状により低音を下部から取り出します。
また平面バッフルや後面開放型は、裏面の反射音の影響が強いので設置にシビアですが、絨毯スピーカーは裏音を筒の中で吸収するので、どこでも気軽に設置できます。

「気柱共鳴」

絨毯スピーカーは、気柱共鳴管の形状です。
共鳴管のわかりやすい例はパイプオルガンです。異なる長さの管が並び、管の長さで共鳴する音がきまります。
円筒の素材が固い紙や塩ビなら、その共鳴音がやかましく響きすぎるのは想像に難くありません。
絨毯スピーカーの場合、圧力が吸収され気柱共鳴はおきていないようです。
これは素材に左右され、ヨガマットで試すと、管らしい響きが残ります。

「錘の効果」

音をクリアにするには、スピーカーユニットの振動を抑えることが有効といわれます。
磁石に錘をつけ、振動板との重量比高めてスピーカーユニットの振動を抑えてみました。
しかし、期待に反し正直効果が感じられませんでした。
一般的に錘は、ユニットの防振よりスピーカーをエンクロージャーに圧着したり、エンクロージャー自身の振動を抑える効果のほうが遥かに大きいように思います。

「電気的な補正」

低音をさらに増強するために電気回路で補正してみました。

絨毯スピーカーの回路

しかし重低音と引き換えに解像感が劣化します。
ハイパスフィルタ回路の追加や、抵抗やコンデンサの交換も試しましたがクリアな音色には戻りません。
やはり簡単なものでも、余分な電気回路は、音質低下を伴うようです。
クリアな音色の絨毯スピーカーだからこそ顕著に感じるのかもしれません。
マルチウェイなど回路搭載のスピーカーで音が濁るのはこのためだと思います。
かくして「絨毯スピーカー 試作1号」の完成です。
この単純な構成で、開放的でダイナミック、かつリアルで立体的な音が再現可能です。