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バックロードホーンスピーカーは楽器である

バックロードホーンスピーカー

試作2号はバックロードホーンスピーカーです。

【動機】

絨毯スピーカーをつくってみて、気になるのは自作派の人の多い、バックロードホーン型のスピーカーです。作例も多く、どのような音がなるのか気になるので自作してみました。

【バックロードホーンについて】

インターネットで調べると、実例として出てくるバックロードホーンは、ホーンと言いつつも純粋なホーンではありません。音響迷路、共鳴管の要素が多く含まれます。
直線部材でつくり、ホーン長を確保するために180度や90度に何度も折り返し、管路に平行な部分が数多く含まれます。
音は低音ほどよく回折します。また180度に曲げれば、反射する際に中高音は吸収されやすく低音が残ります。
つまり折り曲げる事で低音のみを取り出そう、ということでしょう。定常波も複数発生するはずですし、そもそもホーンとは別の原理が強いと思います。

また巷では振動板が自由にのびのびと動けるとの記載が多いですが、ロードという言葉の通り、空気室とスロートを持つ構成なので、それなりの内圧がかかります。バスレフや密閉ほどでないとしても、筒型スピーカーよりは負荷(ロード)が大きいはずです。

今回やはりバックロードホーンというからには、管路はホーン形状にしたいと思いました。
そこで思いついたアイデアは、建築ではおなじみのボイド管を利用して、ホーン形状に近く、かつコンパクトにすることです。

【ボイド管スパイラル】

まずボイド管を半分にカットします。そしてそれぞれのボイド管を次第に半径が大きくなるように接続してきます。
ボイド管はそれぞれ半分にするので丁度2組つくることができます。
これで理想形状に近いホーン形状が、音道に全く無駄がなく極めてコンパクトに実現できました。
あとはこれを2枚の板で挟みます。

バックロードホーンスピーカー

精度の問題でどうしても隙間ができてしまいましたが、設計事務所おなじみのスチノリを使います。木工用ボンドより痩せが少なく、エポキシに比べれば安価です。
ただし、粘りが少ないので、木工用ボンドで接着後、隙間埋めに使いました。

塗装は弊社の定番の墨汁です。極めて安価かつ塗りやすい塗料です。

バックロードホーンスピーカー

【スピーカーユニットなど】

スピーカーユニットはTangBandのW3-881SJです。
恐ろしく薄い振動板と強力なネオジウムマグネット、そして裏に音がよく抜けそうな独特の形状、が気に入り採用しました。
そして、この小さなユニットは、外見から想像もできないほど低音がよく鳴ります。

素材は、こだわる方の多い部分ですが、私はホーンがしっかりエンクロージャーと接着されていればリブの役割を果たし、面剛性を格段に強固にするので、あまり関係ないのではないかと、想像しています。

【音の感想】

いよいよ完成したスピーカーを鳴らします。
とにかく良く鳴ります。絨毯に比べスピーカーの効率が高い。(同じボリュームで大きく聞こえる)
これは当然で、滑らかなホーン形状かつ吸音材もないので、ロスなく音が伝達するからでしょう。
ホーンからは低音だけでなく中高音もかなりの量感で出ています。
絨毯スピーカーではここまで低音は再現できません。
ただ、女性のヴォーカルなどが小さく聞こえて、バランスが今ひとつです。しかも音が篭りすぎでモコモコしています。

そこで、スピーカーユニットをFOSTEX FE83enに交換しました。
中高音がクリアになり、同時に低音の量感はW3-881SJに比べれば落ち着きました。
初心者の自作スピーカー講座で計算するとスロート面積が大きすぎで、半分ぐらい閉じたほがクロスオーバー周波数も理想的なようなので、空気室に吸音材を全周貼り、スロート面積を調整します。
また、空気室は円形断面のため、音が反射を繰返し、音が篭る原因ではないかと思うので、その対策としても有効です。
結果、音はさらにクリアになり、低音の量感は少し減りましたが十分です。

非常に綺麗に音の響くスピーカーです。
ここで、ハタと気づきました。これはスピーカーでなく楽器だと。
法螺貝の音やホーン形状の楽器の音を思い出すと音の傾向はイメージしやすいと思います。
音源をより大きく響かせ、残響感を作り出しているのです。
心地よい響きにバックロードホーンのファンが多いのも頷けます。
しかし、英会話など音声を流すと、声が篭り聞き取りにくく、絨毯に比べると、かなりこもっていることがわかります。。

もちろん、私の作成したスピーカーが共振が多すぎるのだと思いますが、多かれ少なかれ、この個性はバッフル面が広く、内部で共振、共鳴、残響がおこりやすいバックロードホーンの宿命だと思います。
有名な長岡鉄男氏がスワン型バックロードホーンを発明したのも同様の課題への回答でしょう。
好みの問題ですが、私にはバックロードホーンは少し方向性が異なるようです。

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