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Work in the forest

「森で働く」を、東京の中心で

|岬に建つヴィンテージビル

かつてのオフィスがあった三田四丁目は、徳川家康により「月の岬」と称された場所です。
現在のオフィスはその対岸、芝公園の先端に位置しています。
近くには前方後円墳の芝丸山古墳があり、海から眺める姿が壮観であったことは想像に難くありません。
古墳、増上寺、緑、そして東京タワーに囲まれたこの地は、太古より人々の営みと祈りが交差する特別な場所です。
拠点となる「32芝公園ビル」は、1977年に竹中工務店が施工した、森ビル初期のナンバービルのひとつであり、東京タワーと芝公園を見晴らすヴィンテージな建築に、現代的な感性を吹き込んでいます。

|WORK IN THE FOREST

眼前には芝公園の豊かな緑が広がり、まるで森の中にいるような感覚をもたらします。
この自然の風景を室内に取り込むことが、今回の設計の主題となりました。
中央のカウンターテーブルにはガラス天板を用い、写り込む緑が会議テーブル、プロジェクションガラスへと連続し、空間全体に緑のグラデーションを広げています。
デスクはコの字型にレイアウトし、集中と対話の切り替えがスムーズに行える構成としています。

|見えない部分への設計配慮

スケルトン天井の課題である配線処理には、壁面上部の入隅にレースウェイを設置し、配線の出し入れが自由で容易なシステムとしました。
書類やカタログ類はすべて扉の中に納め、視界に雑多さを出さないミニマルな空間を追求しています。

|ラバーウッドとSYRINXの思想

新オフィスは、レザーブランド SYRINX のオフィスも兼ねています。
そのため、素材にはレザーブランドにふさわしい「物語をもつもの」を厳選しています。
家具に用いたラバーウッドは、ゴムの採取が終わった廃木を、日本の技術で再生させたものです。
SYRINXが扱う革と同様、「副産物のアップサイクル」という価値観に基づいた素材選定を行いました。
今回はラバーウッドの上質な表情を引き出すため、薄く白に染色し、彩度と色むらを抑えることで、意匠性の高い仕上がりとしています。

|エゾシカ革と、いのちの循環

会議室家具の扉には、故・坂本龍一氏が代表を務めていた森林保護団体 more trees 認定のエゾシカ革を使用しています。
天敵を失い増え続けるエゾシカは、森林破壊の要因ともなっており、その命を無駄にせず活かすという考え方に共感し、採用に至りました。
傷や弾痕をあえて残した革の表情には、命の重みと自然との関係を感じていただけます。

|Connected Table

家具は将来的な再利用も見据えて、1mモジュールでシステム化しています。
なかでも会議テーブルは、コの字型のスチールフレームを木の角材で緊結する独自構造により、シンプルで容易に分解可能な構成ながら、極めて高い剛性を実現しました。
意匠登録も行っており、最小限の要素で高い機能性を備えた、弊社やSYRINXらしいミニマルを追求したデザインとなっています。