佐藤宏尚建築デザイン事務所

絨毯スピーカーの低音を増強する


2015.01.16

絨毯スピーカーに関する続きです。

【絨毯スピーカーをしばらく使ってみて】

先日作成した絨毯スピーカーですが、少し音の重心が高く低域の音が少ない事が気になります。
それを改良すべく、いろいろと実験しました。

【バスレフダクト化】

絨毯スピーカーをバスレフ化できるなら、低音を増やすのにこんな簡単なことはありません。
バスレフダクトを活かすには、エンクロージャーの内圧が必要となりますが、絨毯は伸縮して内圧を吸収してしまうので、絨毯スピーカーとバスレフダクトは非常に相性の悪い技術です。
もし多少なりの効果が創れるとすれば、バスレフポートに向かって、徐々に筒を絞ればよいのではないかと考えました。
波がリアス式の海岸沿いで増幅されるように、断面積を徐々に絞って行けば音圧も増幅されるはずです。それがバスレフポートと綺麗に連続すれば、最大限の効果が発揮されるはずです。
導波管とでも言えばよいでしょうか。空気の出入りがスムーズになれば応答性もよくなるはずです。
漏斗を用い実験しましたが、確かに低音は出ますが、音圧がありません。
やはりバスレフダクトと絨毯スピーカーは相性が悪いようです。

【パッシブラジエーター(ドロンコーン)】

小さなボディで爆低音のBOSEがM2でパッシブ・ラジエーターという名称で利用している技術です。簡単に言えば、振動板だけのスピーカーユニットを内圧でふるわせ音を出す技術と言えます。これも実験してみましたが、絨毯スピーカーでは、パッシブラジエーターに音が届く前に音圧が下がりすぎるのか、あまり効果がありませんでした。

【結論と新たな疑問】

内部容積を増やせば、低音は強くなります。また配置を部屋の角部にすることもかなり効果的です。それ以上大幅に低音増強することは難しそうです。
しかし、それでも絨毯スピーカーは、画期的なスピーカーだと思います。
私はこれまで、低音はエンクロージャーによって増強すべきで、その常識に疑問を持ちませんでした。
しかし、絨毯スピーカー(ソフトエンクロージャー)を知り、果たしてこれまで当たり前に思っていた事が本当に正しいのかわからなくなりました。

【デジタル時代に相応しい新しいスピーカーシステム】

出力されたアナログ信号を電気的に増幅すれば音質は劣化を免れません。同様に共振やバスレフを利用して低音を増強しても、やはり音質に影響があるでしょう。
数年前までは他に方法がありませんでした。しかし音源がデジタル化した現在において、スピーカーのみが旧態依然のままで果たしてよいのでしょうか。
デジタル音源なら、音を好みにあわせてアナログ出力前に音源を調整することが可能です。
これまでハードに頼った部分をソフトで処理すれば、スピーカーにも新しい可能性が生まれます。
その新しいスピーカーの設計思想は、低音増強を主眼とした現在とは大きく異なる方向性となるでしょう。
出力する音源を調整できれば、実は周波数特性で優劣を競うことに意味はなくなります。
音源をスピーカーの特性をふまえ、リスナーが自分の好きなように調整し、その出力信号を、できるだけピュアに再生することこそ、理想的な音の追究となるかもしれません。「デジタルフィードバック理論」とでも名付けましょう。

そして、絨毯スピーカーは、まさに理想的な解答の一つです。

【写真の世界との相関】

これは私の好きな写真の世界とも相関していると思いました。
私はデジカメ創出期に既に旧態依然とした一眼レフカメラは、デジタルでは最適なシステムでなく、ミラーのないカメラ(今のミラーレス)こそがデジタル時代に相応しいと予言していました。
また写真の加工においても、シフト調整やエフェクトなどはシフトレンズやフィルターを頼らず、デジタル処理で行なうほうが素直です。そうなればハイエンドの世界においても、既存の常識に囚われず、できるだけ補正しやすい歪みを残しつつ、シンプル&コンパクトでリーズナブルで解像感を追究したレンズ構成にレンズの設計思想も転換するはずです。(現在はまだその途上です)
スピーカーの世界も、デジタル時代に相応しい、シンプルでリーズナブルで、解像感の高いものが、登場する可能性があると思います。

ただし、いくら補正すると言っても、ある程度元から低音から高音まで素性がよくないと物理的に不可能です。補正がきつすぎると劣化するのも写真と同様です。
さて、製作から半年程経過し、エイジングが十分に進んだ現在では低音がそれなりに出るようになり、結局イコライザーの使用は止めてしまいました。ALPAIR7は本当に優れたユニットです。(CHR70でもエイジングが進むと十分な低音が出ます。)

(追記:この絨毯スピーカーの低音問題は、SYRINXへの進化の過程で完全に解決しました。)

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