ロボコン・全国大会優勝
今回ご紹介するのは、小学4年の息子の作品。芝浦工業大学が開催する、「第18回 芝浦工業大学ロボットセミナー全国大会」で全国優勝した。今年は全国各地32ヶ所、1750名の中から上位入賞者135名が豊洲のキャンパスに集い競い合った大会である。
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全国大会に先立ち、8月に芝浦工業大学で3日間のロボットセミナーがあり、ロボット製作・地方大会が行われた。参加したのは、「ボクサー」と呼ばれるタイプで、移動が車輪でなく、わざわざ六足歩行の凝ったメカニズムで、これだけで開催者側のこだわりとロボット愛がひしひしと伝わる本格的なキットだ。
今回の息子のマシンは、実は参考例があった。セミナー初日のお昼休みに教室に流れていたムービーがヒントになった。内容は、大工さんであるおじいちゃんが孫のロボット作りを手伝う映像で、ボディーを後ろに移動し、アームを伸ばし下敷きを前に取り付けていた。息子はもともとデコレーションに興味が全くなく、「とにかく強くしたい」と言っていたので、偶然そのムービーを見かけ、息子と「下敷き作戦で行こう!」と意気投合。その日は必要そうなものを近くのホームセンターで買い出し終了。
2日目も組み立て作業。まずはノーマルに組み上げるものと思って午後様子を覗いてみると、いきなり改造を想定し、マニュアルを無視して、ベースを逆に使いボディーを後ろに、さらにはアームのギアも、天地逆に、モーターが頭のように組み立てる暴走ぶり。アームがなるべく下を向くように工夫したのかもしれない。結果的にナイス判断だった。息子は早々に組み立てを終え、前日買い出した塩ビ板をカットし、ビニールテープで無理やり固定して、早速バトルをして遊びはじめた。しかし、下敷きがフラフラでうまく機能しない。周囲からは「下敷きくん」との愛称で親しまれた。
この日はここからが長かった。セミナー後に、息子と二人で会社に行き、改造を開始。デコレーションを一切行わず、ひたすら強くすることだけに集中した。ここで1つだけ、ネットで調べた情報を元に入れ知恵をした。重量制限の1kgは電池抜きの重量なので、リモコンの電池を本体側に載せれば、電池の重み分さらに重さを上乗せできる。リコモンの配線は2本余っている。その2本を使えば、比較的簡単に電池をリモコンから本体側に動かせる。その他、アームの作製、下敷きの固定など、難しい箇所は私が手伝った。
通常とは異なる改造をしているので、ネジの頭とフレームが干渉したり、動きがおかしくなったり、異音がしたり、想定外の問題が頻出する。都度、息子と「ああでもない、こうでもない」と原因を追求し、調整。しかし、これこそが「ものづくりの醍醐味」である。錘も会社で使えそうなものを物色し、1kgに近づけた。その日は夜中の11時まで2人で粘りなんとか完成。ギリギリまで試行錯誤を繰り返し、完成度を高めたことは、息子にとって貴重な体験になったと思う。
3日目地方大会。予選リーグを危なげなく全勝し、この日はあだ名も「下敷きくん」から「最強くん」に昇格した。このまま決勝トーナメントも勝ち進むと思っていると、準決勝で、時間制限間際に慌ててリモコンのコードを引っ張ってしまい、惜しくも3位で終了。本人は悔しくて涙ぐんでいたが、全国大会への出場参加資格はゲットした。
全国大会へ向けての大きな改造はなかったが、地方大会で感じた課題は改良した。一つは、下敷きを透明にしたこと。黒い下敷きでは足元が見えず、足を踏み外すリスクがある。二つ目は、ネットから得た情報でリモコンの改造。誤操作で不用意に腕を上下させてしまうことが多く、押しボタンを挿入して誤操作を防ぐようにした。
そして全国大会。大きさ、重量は制限ギリギリ。しかし、足回りの動作は軽快。予選リーグでは、6mmの段差に下敷きがひっかかり攻めきれず、何度か引き分けになってしまうも、後半は段差の乗り越え方のコツを掴み、その日は結局一度も負けなしで優勝を決めた。
この競技、やはり下からすくいあげるタイプが、一番有利だと思う。掬い上げる部分は、息子のマシン以外は金属板か紙を使っていたが、塩ビ板の利点は柔軟性が高いので、地面に押し付け密着させやすく、同タイプと対戦しても下に潜れることだ。また下から掬われても柔軟性で去なし、逆に攻めに転じたシーンが何度かあった。その他、留意点としては、大会では長時間競技するのでイモネジをメンテナンスしやすいこと。後ろ側に重心があると、簡単にひっくり返ってしまうのでその点も要注意。ボディーを横にして重心を下げる改造をした機体を複数見かけた。(強敵だった)また足回りの調整は、攻めるにしても逃げるにしても、勝敗を分ける重要な要素となる。
今回、息子の意向に沿いながらも、要所要所で手助けをしているが、思えば、私も父に小学校・中学校の工作を随分と手伝ってもらったことを思い出した。親が手伝えば子供の創造性・自主性が損なわれると批判する方もいらっしゃるかもしれない。しかし、現に私が創造を生業にしているように、それは杞憂だと思う。逆に、ものづくりの醍醐味、そして達成感を、より高いレベルで体験出来る貴重な機会であり、その経験は今後の糧になると思う。
最後に、熱心かつ親切にサポートをしていただいた芝浦工業大学の関係者の皆様、全国大会に駆けつけ熱烈な応援をしてくれた息子の友人たち、声援を送ってくれた会場で出会ったライバルたちに心より感謝申し上げます。