CERSAIE 2105 視察
イタリア・ボローニャで開催されていた世界最大のセラミックタイルおよび浴室用品の国際見本市「CERSAIE(チェルサイエ)2015」に招待されたので、視察に行って参りました。
あまりの広さにブースをすべて見て回ることはできませんが、展示傾向がほぼ揃っているので、トレンドは非常に分かりやすい。2年ぐらいすれば日本もこのトレンド一色になっているかもしれません。大きく3つの傾向がありました。
1 フローリング調
最も目についたのが、木質系のタイル。中でもヴィンテージ感を表現したものは、各社力を入れていました。手触りまでこだわっていました。
2 セメント調
木質系と並んで、必ず展示していたのが、セメント(モルタル調)タイル。これもやはりヴィンテージ感のある商品が主力です。
3 ラスティー
フローリング・セメントに限らず、石やレンガ、テキスタイルあらゆる柄で風化した風合いを表現したタイルが多く見られました。
■イタリアとセラミックタイル
近年のデジタル印刷技術(インクジェット)は、容易にどんな柄でもリアルに再現することを可能にし、セラミックタイルの世界に革命を起こしました。 現在では中国やブラジル、インドなどの生産も盛んになってきていますが、なぜイタリアが最先端なのでしょう?
Cersaieのオープニングの祝典は、タイル工場が密集するサッスオーロ(ボローニャから車で1時間ぐらい)の歴史的な宮殿の大広間で行なわれたのですが、天井全面に描かれた素晴らしいフレスコ画を眺めているうちに賦に落ちました。
(会場となった Palazzo ducale。出迎える巨大な彫刻が仁王像のようです。)
(祝典が行われた大広間、フレスコ画で埋め尽くされています。)
(天井の見事なフレスコ画。水平モールディングから上が本物でないってわかります?)
日本の襖絵も架空の空間を構成する点は似ていますが、フレスコ画は写実的で、襖絵は抽象的です。
また、例えば壁の漆喰も日本ならただ白く、平らに、芸術的な職人業で押さえます。
一方、イタリアは、高価な大理石の代わりに、大理石の粉末の入った大理石調の漆喰(ベネチアンスタッコ)を発明しました。(これも手間のかかるこだわった仕事です。)
この感性は、ここまで超リアルな質感のセラミックタイルを情熱的に追究するのと通ずるものがあります。
もちろん労働力の安い他の地域との激しい競争のために、技術を追究し差別化する必要性も背景としてあるでしょう。
しかし、この感性ゆえにイタリアは、今後もセラミックタイルの最先端であり続けると思います。
余談ながら、日本にはリアルな木質シートがありますが、木の質感を再現することに留まっています。もしイタリアなら、素材のリアルさだけでなく、ヴィンテージ感やすり減った塗装の質感の再現など、さらにもう2~3歩踏み込んでこだわるに違いありません。シートはいつまで待っても味わいが出ませんから。
■超大判タイル
上で述べたトレンドに加え、近年技術的にイタリアが突出しているのは、タイルの大型化です。
複数の会社が3.2mx1.6mもの巨大な大判タイルを製品化しています。
これだけ大きければ、キッチンのカウンターも1枚岩のように創れます。
しかもタイルなら、カウンターに向かない柔らかい石種も利用可能です。
超大判タイルは、これまでなかった、新たなマーケットを開拓できる可能性を秘めています。
(巨大な大判タイル。厚さは6mmと薄いですが、裏が樹脂で強化されています。)
早速、現在進行中のプロジェクトで利用できないかと、大判タイルの端部や留部のディテールもよく観察・研究してきましたが、なかなか難しい、というのが正直な感想です。
フルボディータイル(内部まで表面と同種の素材で出来ていて、断面の違和感が少ないタイル)でも、難しい。
留め加工で納めても、わずかに見える端部の質感が異なってしまいます。
天然石のソリッドな質感は端部の1mmが命なんだと改めて認識しました。
(カウンター例。タイル表面よりエッジ部分の質感が劣ります。
せめてトップとサイドでタイルの柄は連続させてほしい。)
しかし、なんと内部まで柄が連続している商品を見つけました!
FMG社のもので国内ではABC商会が代理店となっております。
(内部まで柄が連続するソリッドな超大判大理石調タイル。)
今回の視察は、セラミックタイルに関する見識を深めることが出来た貴重な体験でした。